おいしいファンタジーのご紹介
パンが大好き、その思いが余ってパンのスクールの通ったことがあるくらいのパン好きです。
手捏ねのパンですので、せいぜい小麦粉300グラム位が限度、焼きたてのパンは、すぐに子ども達の胃袋に入ってしまいますが、焼きたてのパンの香りに何とも言えない幸せを感じます。
大人になって出会ったおいしいファンタジーをご紹介させていただきます。
焼きたてのパンの香りとパンを焼くくるみさんの優しさに包まれるように読んだファンタジーです。
茂市久美子著 『つるばら村のパン屋さん』は、こちら。bk1へ
パンの焼きあがる香りにくるまれるように一気に読み終えたおいしいファンタジー
パン職人のくるみさんが、町のパン屋さんをやめて、つるばら村にやってきました。おばあさんの家だった農家の広い台所に、中古のオーブンを入れて、「三日月屋」という宅配専門のパン屋さんを開きました。つるばら村でたったひとつのパン屋さんです。
くるみさんは、おいしいパンを、村じゅうのひとたちに食べてもらいたい、そして、一日もはやく、村の駅前に赤いれんが屋根の小さなお店を持ちたいと思っています。
注文を受けると、くるみさんは心をこめて、パン生地をこね、ふっくらと焼き上げます。はちみつパン、どんぐりのパン、三日月のパン、クリスマスのパン、あんこのパン、ジャムのパン、くるみさんが焼く6つのパンにまつわるファンタジー集。
私が一番食べてみたいと思ったパンは、はちみつパン。くまさんが置いていった「タンポポのはちみつ」入りです。タンポポのはちみつって、どんな味かしら? パンをこねるときと、パンをねかせるときと、パンを焼くときに、くまさんが置いていった蓄音機でレコードを聞かせます。
くるみさんが、くまさんからパン代の代わりににもらったのは、一枚のレコード。くるみさんって、お人良し。それに、試食用のパンをもらうのを忘れてしまったくるみさんは、おっちょこちょい。
くるみさんお得意の三日月パンも食べたいな。
バターをたっぷりおりこんだ生地を、三日月の形にまいて焼く、くるみさんお得意のパンです。うすい羽を何枚も重ねたようなパン、外側がぱりっとして、中は、しっとり、ふんわり。
注文主はウサギの経営するホテル・フローラ。パン代の代わりにもらったのは、一泊分の宿泊券。「心をおあずかりして、さっぱりとあらって、おかえしいたします」と書かれています。ウサギが小さな湖で洗っていたレモン色をしたボールのように丸いものが心なのかな。 ほのかに光っていたなあ。くるみさんの心は、洗わなくても、ほのかに光っていそう。でも、三日月屋の経営は大丈夫?
木の葉の服と木の葉の帽子をかぶった妖精のジノたちが焼くジャムパンも魅力的。つるばらの花のジャムを入れた米粒のようなパン。つるばらの花のあまい香りが漂ってきそう。妖精たちからもらったつるばらのジャムがあまりにも美味しかったので、くるみさんは、毎年、つるばらの季節限定のジャムパンを焼くことにしました。
パン作りには絶対に妥協しないくるみさん。
トラネコの注文したあんこパンには、上等の煮干とかつおぶしをわざわざ買ってきて、生地にねりこみました。おまけにネコたちの会のために台所を貸してあげたり、煮干を食べさせてあげたり、ミルクをだしたり…どこまでもお人よしのくるみさんです。あげくの果てに、パン代の代わりに、ニボシという猫が、くるみさんの家の飼い猫になってしまいました。
注文主が、くまさんやウサギさん、トラネコさん…本当に本当に三日月屋は、大丈夫かしら?
どこまでもお人よしで、おっちょこちょいだけど、みんなのために一生懸命にパンを作ろうとしているくるみさんが大好きになりました。パンの焼きあがる香りにくるまれるように一気に読み終えました。本当においしいファンタジーです。
この本を読んだ人は、皆、くるみさんの焼くはちみつパンや三日月パン、ジャムパンが食べてみたくなるのではないかしら? きつねさんの焼くどんぐりパンはどうかな? 三日月パンを焼いてみたいと思った人は、かなりのパン通です。
私も、つるばら村の駅前パン屋、三日月屋に行ってみたいな。
開店の日を楽しみに閉じた一冊です。
続編の『つるばら村の三日月屋さん』『つるばら村のくるみさん』が楽しみです。
茂市久美子著『つるばら村の三日月屋さん』は、こちら。bk1へ
パンを焼く香りとくるみさんの優しさに包まれるように読み終えた一冊
つるばら村の駅前にくるみさんは、赤いトタン屋根の小さなお店『三日月屋』を開きました。1階がお店と仕事場をかねた台所、その上に屋根裏部屋があります。くるみさんは黒いトラネコのニボシと一緒に暮らしています。
本当は、レンガの屋根にしたかったのですが、預金通帳の残高を見てあきらめるくるみさん、カーテンはキツネが木の葉で作ってくれました。ドアのベルは、クリスマスにサンタさんがプレゼントしてくれます。
きつねのパン、カッパのパン、カエルのパン、魔術師のパン、十五夜のパン、はちみつのパン、木枯らしのパン、クリスマスのパン、ウサギのパン、バレンタインデーのパン、春風のパン、結婚式のパン、つるばら村の動物たち、そして、サンタさんや風の精とくるみさんの織り成す12編のファンタジー。
くるみさんは、夢の中でも、キツネのためにかりっと香ばしい油揚げに包まれたパンを焼くくらいパンを作ることに夢中です。
カッパの注文に応じて作ったみそをぬって、きゅうりをはさんだサンドウィッチや木枯らしの精たちが作ってくれた干し大根をはさんだサンドウィッチなど、和風テイストのパンが登場します。
つるばら村の夏祭りにやってきた魔術師のために、じっくりいためたタマネギと季節の野菜をたっぷり入れたカレーパン、十五夜の月の光を入れたバターロールもおいしそう。くるみさんが、三日月パンの生地から新たに生み出した2つのパン、バレンタインデーのパンや春風のパンもおいしいだろうなあ。
助けてもらった男性に恩返しするために少女となったハクガンに、バレンタインデーのパンを教えてあげるくるみさん。チョコレートを「うすい羽を何枚もかさねたようなパン」の中に入れて作りました。そして、春風の精のために、三日月パンの生地にレーズンとアーモンドクリームを入れ、棒のようにのばした生地を、まるくうず巻きみたいにまいたパンを焼きました。くるみさんの優しさが込められています。
キツネの結婚のお祝いに注文されたワサビパンは、どんな味がするのだろう。
くるみさんの焼くパン香りとくるみさんの優しさに包まれるように読み終えた一冊です。つるばら村の三日月屋さんに、あなたも行ってみたいと思いませんか。
茂市久美子著『つるばら村のくるみさん』は、こちら。bk1へ
「わたしはわたしのプリンパンをつくればいいことじゃない」というくるみさんのたくましさ
つるばら村の駅前にくるみさんがパン屋さんを開いてから三年の月日が過ぎました。赤いトタン屋根の小さなお店『三日月屋』は、一階がお店と仕事場をかねた台所、その上に屋根裏部屋があります。くるみさんは黒いトラネコのニボシと一緒に暮らしています。
三日月屋のパン、プリンのパン、七夕のパン、台風のパン、天狗のパン、節分のパン、デートのパンの7つのパンにまつわる物語。
くるみさんは、みんなが喜んでくれるパンを焼くことに心を注いでいますが、近ごろ、パンの売り上げがあまりよくありません。どうやらあさひ町に新しいベーカリーができたようです。お店の名前は、三日月ベーカリー、ライトバンに乗って、つるばら村までパンを売りにくるようです。笛吹き山のブナの森でミツバチを飼っている養蜂家のナオシさんからの情報です。くるみさんは、蜂蜜をナオシさんから買っていました。
(だれも、うちのパンを買わなくなったらどうしよう…)と不安に思っているくるみさんにナオシさんは、みつろうろうそく(蜜蝋蝋燭)をくれました。不安で眠れないくるみさんの枕元で、ほんのりと甘い花の香りを漂わせてくれます。くるみさんは、おだやかな気持ちになりました。
タヌキのお母さんに教えてもらったプリンは、カラメルの代わりにキャラメルを入れたものでした。くるみさんは、さっそくプリンパンに作りに精を出します。「わたしはわたしのプリンパンをつくればいいことじゃない」と張り切るくるみさんです。
キャラメル入りのプリンパンを食べてみたいな。そして、節分の季節限定の黒豆あんパンもおいしそう。
節分の夜に、三日月屋に訪れた鬼の子どもに、くるみさんは、黒豆あんパンをあげました。お腹いっぱいになるまで、黒豆あんパンを食べた鬼の子は、角がかゆくなったと言います。節分の豆の力で角が抜けるのだとか。抜けた後の角は、野山に春をともすろうそくになると言います。何と素敵な鬼の角なのでしょう。
くるみさんは、優しいだけの人ではありませんでした。突然のライバル出現に不安を抱えながらも、背筋を伸ばしてパンを焼くくるみさんに、たくましさを感じました。くるみさんのように、私も私の道を私らしく歩いてゆきたいな。
どうやら猫のニボシが、くるみさんのために何か計画を立てているようです。つるばら村に素敵な家具屋さんが登場して、くるみさんのためにラブチェアを貸してくれます。パンだけを愛してきたくるみさんに、春のそよ風が、恋の予感を運んできました。それは、この本を読んでからのお楽しみ。 つるばら村シリーズの第3作をたっぷりとご賞味あれ。
つるばら村のシリーズには、『つるばら村の家具屋さん』もあります。
つるばら村にある「青木家具店」は、注文家具を作る家具屋さん。ご主人の青木林太郎さん、奥さんの美樹さん、五歳の幹太君の三人暮らしです。
青木家具店にやてくる不思議なお客さんと青木さん一家の織り成す家具にまつわる12編のファンタジーが収められています。どれも心暖まるお話です。作者の茂市久美子さんって優しい方なのだろうなあ。茂市久美子さんの作品とは、こみねゆらさんが挿絵を描かれた『風の誘い』で出会いましたが、これからも読み続けたい作者です。
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