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2005/02/10

(サトクリフ)『アネイリンの歌』(小峰書店)

(ローズマリー・サトクリフ)『アネイリンの歌』(小峰書店)
無名の戦士プロスパーの語りに著者サトクリフの歴史観を感じるファンタジー
aneirinnouta『アネイリンの歌』は、こちら・bk1へ。
   

 古ウェールズ語で残存する最古の長編詩『ゴドディン』をもとに書かれた本格歴史ファンタジー。時代は、紀元600年頃。ローマ帝国が撤退した後、ブリテン島に残ったケルト民族(ブリトン人やピクト人)が、北欧のゲルマン民族(アングル人やサクソン人)に支配を広げられていく時代、ブリテン島北部のハドリアヌスの壁にまたがる地域にブリトン人の三王国、レゲド、ストラスクライド、ゴドディンが存在した。
 古詩『ゴドディン』は、アルトスによって統一されたブリテンが、サクソン人の脅威に晒された時、ゴドディン王が同胞300人を集めて、戦いを挑み、そして敗れ、たった一人の戦士カナンのみが帰還した悲劇を歌う。
 
 

 ゴドディン王マナゾクが300人の「同胞隊」を結成したことから始まる物語の語り手に著者サトクリフは、叙事詩『ゴドディン』を語り継いだ詩人アネイリンではなく、また、たった一人生き残った戦士カナンでもなく、無名の戦士であり、盾持ちのプロスパーを登場させることによって、子どもから大人まで味わうことができるファンタジーを生み出している。

 プロスパー少年は、白い雄シカを助けたいという気持ちを分かちあったことから、王子ゴルシンに仕官を願いでる。そのことが、プロスパーと奴隷であるコンが「同胞隊」へと入るきっかけとなった。プロスパーは、盾持ちの従者として仕え、サクソン人と戦った。
 歴史の表舞台に表れない一人の従者プロスパーの半生を辿る物語を通して、読者は、今から1400年ほど前の激動の時代を生きた人々を身近に感じることができる。歴史はヒーローやヒロインによって作られているのではない。無名の人々の血と汗によって作られてゆく。サトクリフのそんな歴史観、人間観が感じられた。

  詩人アネイリンを振り返るプロスパーの語りが心に残る。
 …アネイリンも来たが、たまにだった。それも窓のそばに立って、しばらく外を見おろすと帰っていき、めったに口を開かなかった。その理由をぼくたちは知っていた。悲歌をつくるときの詩人は、普通の人とはちがっている。そのとき、偉大な歌に没頭する詩人にとって、生きている人間はみなただの影にすぎなかった。… 命がけで戦闘に同行し、全身の力を振り絞るように悲歌をつくる詩人アネイリンの様子が、今、目の前に甦るようだ。
 
 今も世界中で戦いが絶えない。アネイリンのように、今まさに続いている戦いをしかと見つめて、悲歌をつくっている詩人が存在するのであろうか。人間は、今も影のように生き、露のように消えてゆく。それゆえにプロスパーの語りに、読者は、心が温まる思いを味わうのではないだろうか。 『ゴドディン』に出てくるアルトスが、伝説上の人物アーサー王のケルト名であることにも興味をそそられた。著者サトクリフの人間性と創造性を感じた一冊である。

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コメント

>フクロウ猫様

 初めまして。最近、ブログの更新がままなりませんが、訪れてくださいまして、ありがとうございます。

 熊本のご出身ですか?実は私の両親が熊本の出身なのです。その関係で、幼い頃、夏休み、冬休みは松橋の祖父母の家(本家)で過ごしていました。とてもなつかしいです。

 また、ユング心理学、サトクリフと共通の興味があり、これからのお交わりが楽しみです。

 (アラン・ガードナー)「ふくろう模様の皿」は評論社から2003年3月20日10刷発行にて購入しました。おそらく今も入手可能だと思います。魅力的な作品ですよね。

 今後ともよろしくお願いします。

投稿 まざあぐうす | 2007/03/14 19:32

初めまして。
友人が、私たちの故郷熊本と、彼女の娘が嫁いだ辺境
アイルランドについて詩を書いています。
それを読んだら、サトクリフの本が読みたくなり検索。
偶然このHPに出会い、とても嬉しくなりました。

もう、ずいぶん昔、福音館の「母の友」を
楽しみに購読していた頃の自分を
とてもいとおしく思い出します。
その頃、図書館で児童奉仕を担当していました。

ユング派の深層心理分析と児童文学・とりわけ昔話について
当時もとても関心を寄せていましたので、
まざあぐうすさんのHPが楽しみです。

私の情報は、もう古すぎかもしれませんが、
「フクロウ模様の皿」とか、
今でも読めるんでしょうか?

投稿 フクロウ猫 | 2007/03/14 18:22

Yanさん、コメントとトラックバックをありがとうございました。サトクリフは少しずつ読み続け、全作品を網羅したら、初期作品からもう一度読み直し、書評なり、感想なりを書き残してゆきたいと思っています。
 サトクリフワールド、サトクリフの思想は深いですね。第九団のワシは、やはり「忘れ川」の箇所が心に残っています。三部作の第二作をまだ読み終えていませんので、これからじっくり心の中で感想を温め続けたいと思っています。

 「闇の女王」の後のエンヤの音楽の楽しみが出来ました。いつかYanさんに伺おうかと思っていたところでした。(私は音楽に疎いものですから)タイムリーな情報をいただき感謝しています。
 「闇の女王・・・」は3分の1位まで読みました。ケルトの白馬、ふたりのアーサー、読みたいです。トラックバックとコメントをありがとうございました。

投稿 まざあぐうす | 2005/03/15 12:57

カテゴリー分けがきれいにされていて脱帽です。第九軍団のワシ、いかがでしたか?
忘れ川を渡ってしまった兵士の語りが私は一番
印象に残りましたが、基本的には冒険物ですね。
自分探しというのでしょうか。闇の女王を読まれたらぜひエンヤのケルツというCDを聞いてみてください。よかったらダビングしますよ。
ボーデシアと言う曲名ですがクーフリンやエポナも出てきます。ケルトの白馬は読まれたのでしたっけ?
トラックバックが成功するといいですが
ふたりのアーサーもいいですよ。 

投稿 Yan | 2005/03/15 11:50

Yumikoitoさん、コメントをありがとうございます。サトクリフの作品、ずっと読み続けているのですが、書評が、なかなか書けなくて・・・。
 でも、この作品は、短歌を続けている自分にとって、どうしても感想を書き残しておきたかったので、書きました。
 これからも読み続けたい作者の一人です。

 Yumikoitoさんもお読みになられたときの感想などお聞かせ下さいね。

投稿 まざあぐうす | 2005/02/12 07:40

サトクリフ、実は大好きなんです。
図書館で借りるだけなので基本的に読み逃げ、冊数も沢山は読んでいないのですが。
質実剛健で無骨な、北欧の空気が漂う語り口が溜まりません。
ああ。また借りてこよう…。

投稿 Yumikoit | 2005/02/11 22:53

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