(津田直美・著)『セーターになりたかった毛糸玉』(ブロンズ新社)
夜、お客さんが帰った後の手芸店の片隅に置かれた毛糸玉
この絵本は、そんな毛糸玉の心の声に耳を傾けることから始まります。
マフラーになりたい青年毛糸、しましまの帽子になろうと約束を交わした恋人毛糸、このまま毛糸で一生を送ってやるわいといじけている老いぼれ毛糸、何とかしてセーターになれるように誰かが買ってくれるのを待っている10個の赤い毛糸玉たち。
毛糸玉たちの一番のあこがれはセーターになること。
ある日、願いがかなってセーターを編むために毛糸を買いに来たおばあさんに10個の赤い毛糸玉たちは買われてゆきました。
5個の毛糸玉はセーターの胴体に、3個の毛糸玉はセーターのそでに、残りの毛糸玉は、セーターのみごとな胴体とそでをとりかこむ美しいゴム編みに・・・ところが、1個だけを残してセーターはできあがってしまいました。
たったひとつ残った毛糸玉は、余り毛糸の箱の中に入れられ、わが身の不運を嘆きました。「考えるだけ無駄なことだ」と他の毛糸玉は言いますが、赤い毛糸玉は、どうしてもセーターになる夢を捨てることができませんでした。
長いこと忘れられている毛糸玉たちのつぶやきが聞こえますか?
次の日、おばあさんから箱から取り出したのは赤い毛糸玉。
誰より先に箱から出してもらえたことを喜んだ赤い毛糸玉でしたが、おばあさんが編み上げたのは、セーターではなく、小さな手袋だったのです。誰がなぐさめてくれても涙が止まりませんでした。
ところが、決して夢をあきらめなかった毛糸玉が数奇な運命の果て、とうとうセーターになることができるのです。
さまざまな試練に出遭いながらも、決して夢をあきらめなかった赤い毛糸。夢は、自分の思った通りに叶ってゆくものではなく、夢を持ち続ける意志によって叶ってゆくものなのでしょうか。最後のページの赤い毛糸の笑顔は、夢が叶ったしあわせに満ちています。
健気な赤い毛糸から、あきらめずに夢を持ち続けることの大切さを教えられました。小さな手袋が一体どうやってセーターになったのでしょう。知りたい方は、ぜひ、この絵本を開いてみてください。

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