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2008/02/25

河合隼雄著『ケルト巡り』(日本放送出版協会)

 継続的に読んでいるローズマリー・サトクリフの作品を通して、ケルトの文化に興味を抱いています。ユング心理学の第一人者である河合隼雄さんの著作集(全14巻)も再読しながら、ケルトとユング心理学と現代を生きる私たちを結ぶ一冊を見出しました。『ケルト巡り』です。
 サトクリフの作品の理解へと向かう本ではありませんでしたが、ケルトの文化が、これからの日本の癒しへの大きなヒントを与えてくれるのではないかという示唆に心惹かれました。

 心理療法家である著者が、日本とケルトとの欧米文化にはない共通点に着目して、イギリスやアイルランドのケルトを巡り、ケルトの「おはなし」や音楽、ドルイドと呼ばれる自然信仰などを通して体験したことを生身の言葉で語った一冊です。 

 著者は、心理療法家として、親子、夫婦、職場の人間関係、ノイローゼの症状への解決の道を見出しながら、現代という時代をいかに生きるのかという根源的な問いと直面してきました。そして、その解決を求めてケルトの文化へと向かいました。著者の誠実な問いと大胆な着眼点を好ましく思います。

 

 ケルトと日本の共通点として、「大陸の辺境に位置し、固有の文化が残っている」「言葉がなくても親しくなれる」「ハッピーでない終わり方をするおとぎばなしがある」「アニミズムが残っている」点を挙げていますが、その中でも、ケルトの結末がない「おはなし」や暗く悲しい「おはなし」が心に残りました。
 そもそも納得できないことや悲しいこと苦しいことがあるのが人生なのかもしれません。納得できないことや悲しいこと、苦しいことと折り合いながら生きてゆくことを考える時、「小さい世界しか持たない人は、ひとつダメになるとすべてが崩壊してしまう。複雑なもの、多くのものを持っていれば、「これは失敗したけれど、こっちは大丈夫」となる。そういう人間の深み、多様性を創出してゆかないと、生きているのが苦しくなるばかりだ。」という著者の言葉が心に残ります。

 科学偏重の時代を生きる私たちは、無意識に単層な心の中に自分を閉じ込めてしまっているのかもしれません。人間の深み、多様性の創出という観点から、ドルイドや魔女のような非科学的な存在にアプローチしてみることも一つの術なのでしょうか。科学的なものと非科学的なものと両方にバランス良く立脚して生きてゆく術を見出すことが必要となってきているのかもしれません。
 イギリスやアイルランドのケルトを巡り、自然と人間の共生や口承文学などキリスト教以前の世界観からこれからの社会を生きるヒントを探る良書、お勧めの一冊です。

  The Celts『幻の民ケルト人』は、こちら 

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コメント

>山猫編集長さん

 本当にお久しぶりです。ほのぼの文庫にいらしてくださりうれしいです。

 いろいろと生活に変化があったようですが、きっと前向きに生きていかれることと思います。

 河合先生の『ケルト巡り』を深く読まれていて、いただいたコメントに共感しました。読んでから、もう2年ほど経ちますが、河合先生の洞察の深さを思い出しました。

 河合先生の著書、そして、サトクリフの作品はこれからも読み続けたいと思っています。

 私も再就職をしまして、NGOにフルタイムで勤務しています。
 ブログの更新が滞りがちになるかと思いますが、またいらしてくださるとうれしく存じます。

投稿 まざあぐうす | 2008/04/05 20:04

☆ お久しぶりです。
  4月になりましたね。
  SDTMも私事でありますが、色々と変化がありました。
  引越し、再就職…
  まだまだ立ち上がっていませんけど。

  さて、漸く「ケルト巡り」を図書館で見つけることが出来、
  読んでみました。内容は、まざあぐうすさんが記事に
  おおよそお書きになっていますね。

  バブル崩壊後の日本人の自信喪失について、河合さんは
  提言を最後の方に述べられていました。
  「キリスト教文明は、それ以前にあった価値観・宗教を
  駆逐してきた。日本人はそこをうまく本来あったものを
  残しつつ、うまく取り入れてきた。今後は、意識的に
  バランスをとって行くことをもっと積極的行っていく努力が
  必要だ。単純に『金儲け』だけを目的にすることなく、
  多様な営みを持つ事で、健全な社会を作り出す様に
  持っていくべきだ。自然との共存という事もその一部と
  なりうる。大見得をはることなく、自然や芸術に触れることで
  何か癒されると自ずと思うことが大切だ」

  かなり、要約しすぎているかもしれません。
  心の多様性については、「うつ」に為らないための施策と
  一致していますね。割り切りすぎるのも問題で、色々と
  目を向ける事で自分の心を癒されることを「ケルト巡り」
  の中で再発見されたのだと思います。

  サトクリフ、河合隼雄と偶然にもまざあぐうすさんと同じ
  読書の方向性が一致したのも、何か不思議に思うものです。

  では。

投稿 SDTM | 2008/04/05 06:00

 Oizumi様
 初めまして。ほのぼの文庫にいらしてくださってありがとうございます。梨木香歩さんの作品は大好きです。そして、ケルトの魅力にも惹かれています。ぜひ、またいらしてくださいませ。
 先ほどブログに伺わせていただきました。太陽/The Sunをご覧になられたのですね。私もこの夏、ぜひ観たいと思っていました。映画「蟻の兵隊」もお勧めの映画です。

投稿 まざあぐうす | 2006/08/14 13:22

webで「ケルト巡り」を探していたら、このページを見つけました。梨木香歩は、わが家でも人気の作家です。
その他、気になるカテゴリーが沢山あるので、時々よらせて頂きたいと思います。

投稿 Oimizu | 2006/08/14 05:03

 チョムプーさん、お久しぶりです。コメントをいただきうれしいです。
 私も河合隼雄さんを読み続けています。
 河合隼雄著作集全14巻を数年前に購入しましたので、何度も繰り返すように読んでいます。

 「子どもの本を読む」も収められていますが、確かに名著ですね。中沢新一さんとの対談はまだ読んでいませんので、これから読んでみようかと思っています。

 ホントにケルト巡りしたいですね♪

投稿 まざあぐうす | 2005/03/21 23:10

こんにちは!やっと春めいてきましたね。
河合隼雄先生ですね、私、ファンなんです。著書おっかけです。勝手に「心の師」とあおいでいます。もちろん、この本も持っていますよ。
ほかには、「子どもの本を読む」これは永遠の名著だと思います。あと、「ウソツキクラブ短信」もおもしろいです。それから最近では、中沢新一さんとの仏教についての対談もおもしろいです。
私も1ヶ月くらいかけて、夏のケルトめぐりをやりたいなあ。

投稿 チョムプー | 2005/03/21 21:36

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