台湾の作家ジミーさんの作品
気持ちが沈んだ時、台湾在住の作家ジミーさんの絵本を読むと、静かに癒されます。そして、ぽっと心が明るくなります。
ジミーさんは、99年に発表した『君のいる場所』(小学館)が大ベストセラーとなり、人気はアジアにとどまらず、欧米へと広まっています。そして、ワーナー・ブラザーズにより金城武主演で映画化されました。その後、次々と心に沁みる作品を描き続けています。
1988年より、白血病がきっかけとなって絵本の創作活動に入ったジミーさん。絵の美しさもさることながら、絵に添えられた言葉が人生に対する深い洞察に満ちています。
『幸せの翼』(小学館)
幸せって「何もかも奪われてもわたしらしく生きること」でしょうか
才能、社長という名誉と地位、お金
美しい妻、かわいい子ども達
「約束された幸せ」とでも言うのでしょうか
彼は「誰もが夢みる世界」の全てを持っていました
その彼の背中に突然生えてきた翼
彼の意のままにならない翼
会社を失い、妻子を失い、両親を失い
彼から何もかも奪った翼
彼を死ぬほど辛い目に遭わせた翼
彼を雷鳴がとどろく黒い雲の中に連れ去った翼
その翼を「幸せの翼」と呼んでいいのでしょうか
「誰もが夢みる世界」から空に飛び立ち
鳥の世界の住人となった彼
人々の記憶から消えてしまった彼
遠く深い山の中で迷った子どもを助けたとも
遠い地の果て、吹雪の中で遭難しかけた探検家を助けたとも
幸せって何だろう
美しい絵の中を飛ぶ[人の姿をした鳥]を見つめながら考えました
点頭てんかんという重い病を抱えながら生きている娘
てんかんの発作に耐え、演劇と水泳を頑張っている娘
あるがまま日々を過ごし、笑っている娘
才能も地位も名誉もないけれど夢と希望を持っている娘
幸せって「何もかも奪われてもわたしらしく生きること」なのでしょうか
目の前にいる娘の姿を見て思いました
「いつまでも 消えない希望
あるがままを 受け入れる勇気
信じよう 奇跡はきっとあるのだと
黄昏の空にも 美しい虹は浮かぶのだから」
最後のページに記された4行の言葉が心に深く残りました
空を飛ぶ[人の姿をした鳥]を見かけたら
「がんばって。あなたらしく」と
あなたは声をかけることができますか
『地下鉄』(小学館)
今ある自分を受け入れて、一歩踏み出す勇気を与えてくれる美しい絵本、幸せとは何かを考える機会を与えてくれる奥深い絵本です。
地下鉄の入り口で、天使に「サヨナラ」と言われた日から視力を失った少女がいました。光のない世界に慣れた15歳の少女は、再び地下鉄へと向かいます。光のない世界がどのような世界なのかを本当に想像できる読者は少ないでしょう。私もそんな読者の一人です。
地下鉄の中で居場所を失う少女、地下鉄の音に象の行進を想像する少女、地下鉄のはるかかなたに潮騒の音を聞く少女、いくたびもまちがった電車にのり、まちがった駅で降りる少女…少女が新たな世界へと踏み出してゆく地下鉄の旅は、切なく、悲しく、美しい旅です。
目が見えていても、目が見えなくても、「世界は 出口のない 迷路」なのかもしれません。視力を失った少女の地下鉄の旅は、私たちの人生の縮図のようでもあります。
思い切って、地下鉄にのった少女は、遠い日の記憶を辿り、明日への思いを馳せるようになりました。「幸せは ほんの近くに 隠れているかもしれない」と少女は感じました。そして、「心に輝き始めた かすかな光」を探してみようと思うようになりました。
目が見えていても、目が見えなくても、幸せとは、「心に輝き始めた かすかな光」を感じることなのかもしれません。今ある自分を受け入れて、一歩踏み出す勇気を与えてくれる美しい絵本、幸せとは何かを考える機会を与えてくれる奥深い絵本です。
『ラブ・レター』(小学館)
台北の絵本作家ジミーさんが書いた48通のラブ・レター集です。
宛て先と差出人がユニークな人たちです。
例えば…
仕事好きのあなたへ 旅の空にて、B.より
優しすぎるあなたへ 泣き虫より
集者様へ ジミーの分身より
愛する詩人様へ 性格美少女より
善良な君へ 悲観主義者より
お月様へ 異境の旅人より
青春時代へ 現実を見たくない私より
足踏みしているあなたへ 年寄りダンサーより
少女たちへ 夢の雫より
切なく、暖かく、鋭く、優しい言葉に満ちています。
そして、ジミーさんの美しく、可愛い、メルヘンチックな絵が添えられています。
48通の中から、あなたへのメッセージを見つけてみませんか。
生きてゆくのが辛くなった時、一歩踏み出す勇気が与えられるでしょう。
寂しくなった時、疲れた時、そわそわして落ち着かない時、きっとあなたの心を優しく包んでくれるでしょう。
あの日、あの時、あなたが言えなかった言葉を見つけてみませんか。そして、勇気を出して、あなた自身の言葉でラブ・レターを書いてみませんか。一枚のカードから新たな道が開けるかもしれません。
「どんなに道が遠くても
この手紙
必ずあなたに届けます…」という
ジミーさんの心を受け取ってみませんか。
『君のいる場所』(小学館)
台湾の作家ジミーさんの描く場所~光と影が交錯する中で、人の孤独が美しく描かれている
郊外の古いアパートの隣に住んでいる彼女と彼
彼女は、どこへ行くにも左へ曲がる癖がある
彼は、どこへ行くにも右へ曲がる癖がある
隣に住んでいる彼女と彼が会うことはなかった
彼女は、悲しい小説を翻訳している
彼女は、ときに、世界は悲しみにあふれた場所だと感じる
彼は、ヴァイオリンを弾く
彼は、ときどき自分がからっぽで無力だと感じる
ふたつの平行線が天使の力で交わった
公園の噴水の前で出会った彼女と彼
胸躍る午後を過ごしたふたり
大粒の雨の中、電話番号のメモを交わして別れた
雨ににじんで見えなくなった文字
左に曲がる彼女と右に曲がる彼と
隣に住んでいても
ふたりは会えない
壁のない牢獄のような都会
疲れと閉塞感の中で
つかの間の思い出がきらめいている
彼女と彼が確かにいた場所
ふたりで過ごした午後の思い出とともに
季節が巡る
季節の中で揺れ動く彼女と彼の心
人を想って揺らぐ心は、切なく悲しく美しい
光と影の交錯する中で
人の孤独が
美しく描かれている
台湾の作家ジミーさんの描く美しい場所
『君のいたとき、いないとき』(小学館)
月と出会った孤独な少年の物語~人間の根源的な孤独が、美しいイラストと洞察に満ちた言葉で描かれている絵本です。
夜の町は人工の照明にあふれています。夜の闇を照らす月は、孤独なのかもしれません。昼を照らす太陽は、植物の光合成、温度の確保のために科学文明が発達した現在も人間から実質的に必要とされています。夜を照らす月は、どうでしょうか。
月は美しい。月は、昔も今もその美しさゆえに人の心を照らしているのかもしれません。もし、その月が姿を消したとしたら…どうなるでしょうか。
孤独な月が、孤独な少年のもとにやってきました。偶然のようで、必然の出会い。人工の月があふれる町で、本物の月と出会い、孤独な少年の心は癒されてゆきます。月とともに過ごした記憶は、時の流れの中で、少年の成長とともにどのように変容してゆくのでしょうか。
月は僕だけの月だったはずなのに、空に帰った月は、世界中のみんなを照らしています。「ひとりじゃないよ」と教えてくれた月のそばに行きたいと思うのが人情でしょう。「ひとりじゃないよ」と教えてくれたのが、もし、人間の誰かだったら、少年の孤独は、もっと違った形で癒されていたのかもしれません。
人間の根源的な孤独が、美しいイラストと洞察に満ちた言葉で描かれている絵本です。見えなくても存在する、記憶が薄れても確かに存在する大切なものが、この世の中には存在することを教えてくれます。
『メモリーズ』(小学館)
台北の絵本作家ジミーさんが、描いた60枚の絵のメモリー集
おとなになる前に許されるつかの間の無邪気を描いた「天より高く」
美しい浜辺でのままならない人生の始まりを描いた「小さな始まり」
先生に言えなかったひと言を描いた「秘密」
雲の言葉はわからなくても見ているだけで楽しくなれたあのころを描いた「耳をすませば」などの絵が収められている。
あとがきに「写真を撮る前後の面白さを捉えようとしたもの」「「作品を描くこと」そのものが過去を思い出すヒントとなった」と書かれている。
悲しみには、ユーモアが、楽しさの中には滑稽さが、悲喜こもごもの思い出が、美しく描かれている。ジミーさんの絵もすばらしいが、絵に添えられている詩情溢れる言葉に、人生に対する深い洞察が込められている。
「競争」という絵に添えられた言葉
人生で待ち受ける
さまざまな競争ならば
せめて 楽しもうよ
今 ここにある 小さな幸せを
「愛の花」という絵に添えられた言葉
絶え間なく 降りそそぐ 愛の花
一生 受け取り続ける 人がいる
一生 受け取り損ねる 人もいる
「うしろ姿」という絵に添えられた言葉
幸せの小道は あまりにも短い
ここにじっと すわっていても いいですか?
が心に残った。
写真や絵に生活の断片を残しておくことも大切だが、言葉に残しておくことも素敵なことだと思いました。
☆しのわずり☆さんのホームページに、ジミーさんの本のすばらしい紹介があります。こちら。
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コメント
>kaorihonokaさん
初めまして。トラックバックとコメントありがとうございます。
すてきなブログですね♪
『君のいる場所』、ホントにステキな絵本だなぁと思います。
ジミーさんの絵本は事あるごとに開いて、癒され、励まされています。
新作絵本もすてきです。私もぜひ全部揃えたいと思っています。
投稿 まざあぐうす | 2006/02/10 21:37
(* '-')ノ ハジメマシテ☆
こんばんは。ご報告遅れましたがTBさせていただきました。お返しのTB2つどうもありがとうございました。
ジミーさんの「君のいる場所」を読んで、ものすごく感動しました。
手元に置くまではかなり時間がかかってしまいましたが、何度も書店で立ち読みしたり、この絵本を忘れたことはありません。
他の作品も読みましたが、やっぱりこの作品が一番好きです^^
いつか、ジミーさんの絵本をすべて手元に置きたいなあ~と思っています。
投稿 kaorihonoka | 2006/02/09 23:27
魔女さん、こんなにたくさんのトラック・バックをいただき、本当にありがとうございます。後ほどゆっくり拝見します。楽しみです。ホントにありがとう♪一緒にジミーさんの作品を楽しめること、喜んでいます。
投稿 まざあぐうす | 2005/10/04 19:49
まざあぐうすさん、こんにちは!
えへっ、なんだかうれしくなって、たくさんTBさせていただいちゃいました。
まざあぐうすさんのとこに来ると、なんだかうれし~。
(ごろにゃん)
そういえば、しのわずりさんのところをご訪問したことないわっ。
どきどき。
後でいってみなければ。
日本にジミーさんを紹介してくださった、大切な方ですもんね。
そんな方をご紹介してくださって、まざあぐうすさん、ありがとう!
投稿 本棚の魔女 | 2005/10/04 15:23
本棚の魔女さん、コメントとトラックバックをありがとうございます。魔女さんとまたまた絵本の世界を共有できうれしいです。
ジミーさんは人間の孤独を絵本の限界に及ぶまで表現し尽している方だと感じます。美しく奥深い表現が好きです。これからも読み続けたいと思っています。
投稿 まざあぐうす | 2005/03/21 06:03
こんにちは!
ジミーさんの絵本は、こちらで出会わなければ手にとらなかったかもしれない本です。
そう思うと、本との出会いも、やはりご縁だなあと、
本を離れたところでもしみじみ。
まさに、「右へ行く彼と、左へ行く彼女が」交差した瞬間みたいな出会いを、ありがとうございました!
投稿 本棚の魔女 | 2005/03/21 01:00
ヒデボーさん、書き込みをありがとうございました。奥様と同じ本を読んでいたなんて・・・またまた私とヒデボーさんの不思議なご縁ですね。
わが家の主人も読書はほとんど歴史物でしたが、去年の後半から絵本や児童書を読むようになりました。人生にやや疲れを感じてきたようです。仕事一筋の主人・・・今、絵本や児童書に心安らぐ気持ちを味わってくれているようで、共通の世界や話題が増えました。
ヒデボーさんも、気分転換にぜひ、絵本をお読みくださいね。すぐに読めますし、くり返し気軽に読めますので、本当に気分が楽になります。
私も、奥様と同じく、絵本に心癒されている一人です。
投稿 まざあぐうす | 2005/01/06 09:00
あれれ,この蒼い表紙どこかで見たような・・・?
ありました!我が家の本棚にも。
「君といたとき、いないとき」
多分,妻が買ってきたのでしょう。妻は詩を書いたり
絵を描いたりするのが好きです。とっても感性が
豊かです。ちょっと過敏なところもあるくらい。
長く,メンタルな病気と付き合ってもきています。
この本,私も読んでみました。哀しく切なく,そして
温かく・・・ほっと一息ついて自分自身の中にうずく
まってみるようなひとときをあたえてくれますね。
正直に告白すると,私はあまり本を読む方ではあ
りません。忙しいのもあるのですが,読書という
ゆったりとした時間を持つのが苦手と言った方が
正確かもしれません。聖書ですら,全部を通読し
てはいませんから(^_^;でも,今年はこうして,
ほのぼの文庫に出会えたから,絵本の世界を旅して
みたいなという気持ちになっています。
投稿 ヒデボー | 2005/01/05 22:09
あじさいさん、年末に初めて書き込みをさせていただいたにも関わらず、早速こちらにいらしてくださって、トラックバックと書き込みをいただき、本当にありがとうございます。とってもうれしいです。
明けましておめでとうございます。
"今ある自分を受け入れて、一歩踏み出す勇気を与えてくれる美しい絵本"ジミーさんの絵本のテーマは、私にとっては、後半生のテーマになりそうです。
本当に頭でわかっても、実行するのは・・・ですが、ジミーさんの絵本を心の支えに、今年も前向きに歩んでゆきたいと思っています。
良いお年でありますように・・・♪そして、ぽちさんを通して、あじさいさんのサイトに出会えましたこと、とてもうれしく思っております。
今年もどうぞよろしくお願い致します。
投稿 まざあぐうす | 2005/01/01 08:55
ぽちさん、明けましておめでとうございます。
早速「ほのぼの文庫」にいらして下さってありがとうございます。
ジミーさんの作品、本当に素敵です。もう何度も何度もくり返し読んでいます。『ほほえむ魚』、図書館から年末ぎりぎりに借りて来ました。
『空色勾玉』3部作を読みながら、その合間にくり返し読んでいます。デビュー作なのですよね。ほっとする・・・というぽちさんのご感想、同感です。
『白鳥異伝』を30日から読み始めました。すっかりはまっています。もしかしたら、『空色勾玉』より、『白鳥異伝』の方をくり返し読むかもしれません。
ぽちさんの感想も、何度も伺いながら読んでいます。
今年も素敵な本に出会えますように・・・♪これからもどうぞよろしくお願い致します。
投稿 まざあぐうす | 2005/01/01 08:49
"今ある自分を受け入れて、一歩踏み出す勇気を与えてくれる美しい絵本"
ジミーの絵本はまさにこの言葉のとおりだと思います。
これって頭ではわかっていても、簡単なようでもやっぱり実行するのは難しいことですよね。
少しずつでも、ジミーのメッセージを受け止めながら、
2005年は少しでも前進していきたいものです。
ちなみにリサとガスパールも、私も大好きです。
投稿 あじさい | 2004/12/31 22:27
まざあぐうすさん、こんばんは。
ジミーさんの記事、しみじみと読ませていただきました。
やっぱりジミーさんはどの作品も素敵ですね。
わたしは最近『ほほえむ魚』を読みました。
デビュー作だそうですが、こちらもとってもほっとする作品でしたよ。
これからもお互いに素敵な本に出会いましょうね。
来年もどうぞよろしくお願いいたします!
投稿 ぽち | 2004/12/31 22:26