2008/02/20

荒井良二さんの絵本の魅力ー時間の流れ

 ふと、子どもの頃に戻ってみたい、そして、ほっとした気分を味わってみたいと思うとき、開く絵本・・・そんな絵本作家の一人が荒井良二さんです。

 荒井良二さんは、日本人で初のリンドグレーン賞を受賞しています。下記は、2005年に書いてブログ「ほのぼの文庫」にアップした文章ですが、今日、偶然、荒井良二さんの絵本が好きという方にお会いして、うれしかったので再更新することにしました。

 荒井さんの絵は、「子どもより子どもっぽい絵」かもしれません。荒井さんが絵本に書いている文字も「子どもより子どもっぽい文字」かもしれません。子どもより子どもっぽい絵だけど、子どもより子どもっぽい文字だけど、魅力的な絵です。そして、何よりもほっとする絵と文字です。(「子どもより子どもっぽい絵」という言葉は、荒井良二さんの『ぼくのキュートナ』の一文「子どもよりもっと子どもっぽい、絵を描く天才」より着想を得ました。)

 一ヶ月半ほど読み続けて、絵本の魅力とほっとする要因は、絵本の中を流れる独特の時間にあるのではないかと感じるようになりました。

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荒井良二作『バスにのって』(偕成社)

トントンパットントンパットン 荒井良二さんの刻むゆったりとした時間

 バスに乗って遠くへいくために、一人でバスを待っている人がいます。
 照りつける太陽と小さなバス停
 広い空とそよっと吹く風
 ラジオから聞こえてくる音楽
 トントンパットン
 トンパットン
 トラックが過ぎ、馬に乗った人が過ぎ、自転車に乗った人が過ぎ、いろんな人が通り過ぎて、夜になりました。バスを待っている人も眠り、ラジオも眠ります。
 朝になりました。トントンパットン トンパットンとラジオから、再び音楽が流れ始めます。照りつける太陽と小さなバス停、広い空とそよっと吹く風、そして、ラジオから聞こえてくる音楽、それだけしかない世界です。
 バスは来るのでしょうか。バスに乗って遠くへ行けるのでしょうか。そんなことすら忘れてしまうほど、のんびりとした時間が流れています。
 音楽のトントンパットントンパットンのリズムに乗って、ゆったりとした時間が流れてゆきます。照りつける太陽と小さなバス停、広い空とそよっと吹く風、そして、ラジオから聞こえてくる音楽、たったそれだけの世界ですが、なぜかそんな世界が恋しくなりました。

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(荒井良二)『ぼくのキュートナ』(講談社)

キュートナって、誰? いろいろな楽しみ方ができる一冊の絵本

 「はいけい。ぼくのキュートナ」で始まるキュートナへの手紙とキュートナへの言葉が対をなす15通の手紙集。

 キュートナって、動かない時計をしている。メガネをするとキリッとしてみえる。あるいてて、急に立ち止まる。よわよわしいけど、ちからもち。へんなぼうしがにあう。さむがりなのに、つめたいものばかり飲む。子どもよりもっと子どもっぽい、絵を描く天才。あれしたい、これしたいって、いつもいう・・・。

 キュートナって、誰?キュートナって、具体的な人物像とか浮かばないけれど、「ぼく」にとって特別な存在だってことは分かる。「ぼく」が心底愛しているってことも分かる。
 

 もしかしたら、キュートナって、荒井良二さん、あなたのことかしら?
「きみが描く絵ってスゴイね。子どもよりもっと子どもっぽい。天才だよ!」という言葉が胸にキュンと来る。自分の中にいるもう一人の自分にこんな手紙が書けたらいいな。自分のことをこんなに愛せたらいいな。
 子どもよりもっと子どもっぽいけれど、スゴイ絵と愛に満ちたユニークな言葉、最初は、手紙だけを読んで、次に言葉だけを読んで、その次に手紙と言葉を比べながら読む。そして、絵だけを見る。いろんな楽しみ方ができる一冊。

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2005/05/02

江國香織・文/荒井良二・絵『モンテロッソのピンクの壁』(ほるぷ出版)

猫のハスカップの愉快で、不思議な、奥深い旅の物語 bk1

monterossonopinknokabe2  ハスカップはうす茶色の猫。体の大きさは中ぐらい、性格は楽天的で、金茶色の目をしています。どこにでも居そうな猫ですが、それが違うのです。
小さな洋館の年取ったご婦人に飼われていて、毎日ソファーの上でまるくなって眠っていました。恵まれている猫、そして、怠惰な猫と思われそうですが、それも違います。
 ハスカップには繰り返し見る夢がありました。夢に出てくるのは、それはそれはきれいなピンクの壁。それが、モンテロッソのピンクの壁。
 「あのピンクの壁のある場所こそ、私がどうしてもいかなきゃならない場所なんだわ。なぜだかわからないけれど。」そして、それが、ハスカップの旅のはじまり。

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