2008/01/18

(佐藤初女著)『おむすびの祈り 「森のイスキア」こころの歳時記』(集英社文庫)

 著者である佐藤初女さんは30年も前から自宅を開放し、心を病んだ人、苦しみを抱えた人たちを受け入れて来ました。その季節に採れる新鮮な素材の手料理とおむすび、そして、黙って傍らに座る著者によって多くの人が癒され、励まされました。
 そんな著者を慕う人たちの奉仕や寄付によって、霊峰岩木山の麓に「森のイスキア」という憩いと安らぎの場が開設されました。

 第一章 冬 いのちへの気づき
 第二章 春 人生の種蒔き
 第三章 夏 心で生きる
 第四章 秋 希望の鐘

 著者の生い立ちから「森のイスキア」開設に至るまでの日々や「森のイスキア」の四季を巡る「食」「信仰」「出会い」が美しい写真とともに紹介されています。各章に<佐藤初女さんへの手紙>が一通ずつ引用されています。

「耐えがたきを耐え
 忍びがたきを忍び
 許しがたきを許し
 あたたかい太陽を思わせるやさしい言葉
 冬のきびしい寒さにも値する愛情ある助言
 慈しみの雨のように涙を流しては共感する
 なごやかな風を思わせる雰囲気
 それが母の心
 佐藤 初女」

 巻頭の言葉に著者の生き方が集約されていますが、一冊を読み終えた時、一人一人のいのちを、また、どの食材のいのちをも限りなく慈しむ著者の姿が浮き彫りにされ、著者の命への慈しみにあたたかく包まれ、命への気づきを促されます。
 食という日常の営みを通して人生を深く見つめなおすことができる一冊です。

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全盲の画家・作家ーエム・ナマエさんの絵本や童話

 私が、エム・ナマエさんと出会ったのは、2004年7月10日に明大前のキッド・アイラック・アート・ホールで開催された朗読会「銀河鉄道の夜」(朗読・NHKアナウンサー 青木裕子氏)の会場でした。

 エム・ナマエさんは『朗読画集・銀河鉄道の夜』(NHK出版)のイラストを描かれています。朗読会の会場では、エム・ナマエさんの描かれたイラストがスクリーンに映し出されていました。不思議な美しさ、ほっとする感触・・・以来、エム・ナマエさんの本を読み続けています。

 エムナマエさんのプロフィール(『世界でいちばん長い夜』(自由国民社刊)より)

1948年 東京生まれ1970年 慶応義塾法学部在学中、イラストレーターとしてデビュー1986年 失明と同時に人口透析導入< 1989年 処女長編童話で児童文芸新人賞1990年 全盲の画家として復活1992年 サンリオ美術賞1998年 ニューヨークでの個展が認められる2000年 全米最大の子供服メーカーから ジョン・レノン・コレクションが発表される

 全盲となられてから画家として、作家として再生なさるまでの過程が『失明地平線』に綴られています。

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2006/08/23

死について考える~絵本『水平線の向こうから』(堂園晴彦著・葉祥明/絵)

 人生の折り返し地点を過ぎて、数年間体調を崩して以来、「死」について考えるようになりました。どんなに長く生きても、これまで生きた年数を生きることはないと思うからか、人生の精算ということを考えてしまいます。人は生きたようにしか死ねないという堂園晴彦氏の言葉に触れて、二冊の本を読みました。

 絵本『水平線の向こうから』を開くと、南の小さな島と海、そして、青空が一面に広がります。
 幼くして母親と死別した藍が、15年の歳月を経て、母親の生まれ故郷である南の島を恋人とともに訪れます。真っ青な海と透き通る青い空・・・母親との思い出の地を訪れ、大人になった藍の心に鮮明に甦る記憶、癌を患い長い闘病生活を経て、死期が迫った母親が、8歳の藍に語った死とは・・・。

 死は、その人の存在を消すのではなく、船が水平線の向こうに消えるように、見えなくなるだけ。

 8歳の少女・藍の心に届く言葉で、癌という病が、そして、やがて母親に訪れる死が語られています。15年前の藍の深い悲しみと現在の藍の幸せが交錯して、感動的な結末が訪れます。
 南の島の海、空、夕陽、そして、回想シーンを描く葉祥明氏のイラストが美しく、死というものが明るく浮き彫りにされています。絵本の原作者は、医師であり、鹿児島にてホスピス機能を備えた診療所「堂園メディカルハウス」を開業している堂園晴彦氏。絵本の中に、氏の「先立つ親が心残りのないように、そして子どもが愛する人の死から一日も早く立ち直り、前向きな人生を送れるように」との願いや「未来につながる死を教える物語書きたい」という思いが満ちています。
 人間である限り、生老病死には必ず向き合わなくてはなりません。自分の死、そして、愛する人やかけがえのない人の死にどのように向き合ったらよいのでしょう。それは、人生最大のテーマではないでしょうか。
 『水平線の向こうから』は、「死」というテーマに真正面から取り組み、子どもの心に届く言葉で、その意味を綴った絵本です。読み終えて本を閉じた時、得体の知れない感謝の気持ちに満たされて、無意識に祈りの手を組んでいました。「死を前向きに捉えながら生きていく」ことを学ぶことができる絵本ではないでしょうか。堂園晴彦氏の『それぞれの風景』(日本教文社)と併せて、お勧めします。

 以上、「ほのぼの文庫」管理人の<まざあぐうす>が、bk1に投稿して掲載された書評です。

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2006/02/19

(龍村仁著)『地球交響曲第三番魂の旅』(角川書店)

 地球交響曲は、ジェームズ・ラブロック博士のガイア理論を原点として、世界中のスピリチュアルな体験をもつ人々のメッセージをオムニバス風につづった映画です。(引用:龍村仁著「地球をつつむ風のように」サンマーク出版)その「第三番」の撮影開始を十日後に控えていた1996年8月8日、重要な出演者となるはずであった星野道夫氏がロシアのカムチャッカで熊に襲われて、この世を去りました。
 三年前の「第二番」の撮影中には、出演を承諾してくれていたF1レーサーのアイルトン・セナが不慮の事故でこの世を去っています。二度目の映画撮影の危機に見舞われ、著者が監督として、一人の人間として、どれほどのショックを受けたのかは計り知れません。
 「人生とは、なにかを計画している時に起きてしまう別の出来事のことをいう」と言うアラスカ初の女性ブッシュパイロットで、星野道夫氏の友人であるシリア・ハンターの言葉が「第三番」を象徴しているように思えます。

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2005/01/29

太田京子著『人はクマと友だちになれるか?』(岩崎書店)

太田京子著『人はクマと友だちになれるか?』(岩崎書店)クマに関する情報が分かりやすく整理して語られています。~お子さんと一緒に、クマと人間の共存について、共に考えるためにお勧めの良書です。
hitowakumatotomodachininareruka太田京子著『人はクマと友だちになれるか?』(岩崎書店)は、こちら・bk1へ。

 この本の著者の太田京子さんは、幼い頃、北海道でオリに入れられたヒグマに出会いました。オリには、赤いかすれた文字で「キケン! このクマは野生のヒグマでたいへん危険です。近よらないでください」と書かれていました。ヒグマは、悲しい顔をしていました。
 児童文学の作家で、クマの研究者でも関係者でもない太田さんは、そのクマのことが、まるで友だちのように気になって、「人間とクマは、おたがいに傷つけないで、暮らせないものなのでしょうか? 人間はクマと友だちになれないのでしょうか?」という問題意識を抱きました。
 
 昨年は、クマが人里に出没して起こった被害や事故のニュースを多く耳にしました。本来、山に棲むクマが人里に出てくると様々な問題が生じます。クマの気持ちも考えながら、人とクマが傷つけあうことなくともに生きていける方法はあるのでしょうか。

 

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2005/01/27

菊田まりこ『いつでも会える』

菊田まりこ文・絵『いつでも会える』
死別、生別を問わず、会えない人を想う時、「いつでも会える」とつぶやいてみよう。
itsudemoaeru『しつでも会える』は、こちら・bk1へ。

 一人っ子だった私は、犬と猫がいつもそばにいた。
 犬は白ちゃん、猫はちーちゃん。
 人見知りが激しく、引っ込み思案の私の兄妹だった。
 鍵っ子の私にとって、友達のような存在でもあった。

 白ちゃんは、交通事故で、ちーちゃんは、難産が原因で亡くなった。
 30年くらい前のことだ。
 数万円ものお金を出して、犬猫病院で最大限の処置をしてもらった。
 その甲斐もなく、二匹とも相次いで亡くなってしまった。

 その時の寂しさと悲しみは、今でも忘れられない。
 30数年過ぎた今も、心の痛みがどこかに残っている。
 『いつでも会える』を偶然手にした。
 犬のシロが、みきちゃんを必死に探す姿が描かれている。

 白ちゃんやちーちゃんだって、私と別れるのが辛かったんだ。
 今まで、そんな発想をしたことがなかった。
 心に刺さっていた棘のような痛みが、ふっと和らぐのを感じる。
 シンプルだけど、大切なメッセージを十分に伝えてくれる絵本だ。

 死別、生別を問わず、人生には別れがつきもの
 会うは別れの初めともいう。
 別れる時は相手も辛いのだ。
 会えない人を想う時、「いつでも会える」とつぶやいてみよう。

 
 

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2005/01/19

(絵門ゆう子・著/山中翔之郎・絵)『うさぎのユック』(金の星社)ー5匹のうさぎの「いのちのものがたり」

5匹のうさぎの「いのちのものがたり」~「希望の光に向かう仲間の輪が広がって、みんなで、ゆっくり、にっこり、おっとり、のんびり、がんばって、長~く、一緒に生きていけますように」  
usaginoyukku『うさぎのユック』は、こちら・bk1へ。

  乳がんの全身転移の症状で治療を続けている元NHKアナウンサーの絵門ゆう子さんの初の書き下ろしのものがたりです。聖路加病院から退院後、小児病棟の子ども達を励ますために朗読に出かけた絵門さんは「うさぎの絵を描きたい」という少女・まゆちゃんに出会いました。「私がうさぎのものがたりを創るから、うさぎの絵を描いてね」とまゆちゃんと交わした約束から命を得た五匹のうさぎ達、ゆっくりのユック、にっこりのニッコ、おっとりのオットー、のんびりのノンコ、がんばり屋のバリー。 

 「…一緒に生まれる他の兄妹たちのリーダーになるのですよ。…ゆっくりとよーく考えて生きるのですよ。あなたの名前はゆっくりのユック。いいですね。」という天の声に送られて生を受けたユックが主人公の5匹のうさぎのものがたりです。
 5匹のうさぎ達が母さんうさぎのお腹の中にいるシーンから絵本は始まります。生まれる前の5匹のうさぎ達には、天使の羽がついています。そして、兄妹どうしおしゃべりをしながら育ってゆきます。一番に母さんうさぎのお腹に生を受けたユックは、四匹のきょうだいたちに押しつぶされるようにお腹の中で育ってゆきました。そのせいで、心臓と右足の機能が弱くなりました。ユックは、光の世界へ誕生するまでに、いくつもの困難を克服しなくてはなりませんでした。
 生まれる前の天の声、そして、お腹の中での世界、生まれる時の光の合図…私たちの記憶にない声や世界、そして合図が、ていねいに語られ、美しく描かれています。

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