2005/06/01

(宮澤賢治・文/伊藤亘・絵)『虔十公園林』(偕成社)

kenjyukouenrin  杉の黒い立派な緑、さわやかな匂い、夏のすずしい陰、月光色の芝生。「虔十公園林」は、虔十が杉の木を植えてから何十年もの月日が流れた今も、雨が降っては、すき徹る冷たい雫を、みじかい草にポタリポタリと落とし、お日さまが輝いては、新しい奇麗な空気をさわやかに吐き出しています。

 虔十が亡くなり、村に鉄道が通り、瀬戸物の工場や製糸工場が出来ました。畑や田が潰れて家が建ち並びました。村がすっかり変わってしまっても、虔十が植えた杉の木の列だけは立派に残りました。
 

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2005/03/14

(宮澤賢治・原作/戸田幸四郎・絵)『竜のはなし』(戸田デザイン研究室)

今の日本に欠けている大切なものを教えてくれる類書ない絵本
ryunohanashi『竜のはなし』は、こちら・bk1へ。

 むかし、あるところに住んでいた一匹の竜は、力が強く、恐ろしく、激しい毒を持っていました。竜を見たあらゆる生き物は、見ただけで気を失ってしまったり、毒気にあって死んでしまうほどでした。あるとき、その竜が、良い心を起こして、もう悪いことはしないと誓いました。

 その後の竜の生き様(死に様)は、体中の皮膚がひりひりするほど心身に堪えます。わずか22ページ、言葉数も少ない絵本ですが、皮膚感覚として、また、視覚的に非常に衝撃的な印象を残します。宮澤賢治のファンの一人として、「賢治さんが伝えたかったことの核ではないだろうか」と直感的に思いました。

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2005/03/13

(宮澤賢治・文/たかしたかこ・絵)『雪渡り』(偕成社)

人の子と狐たちの出会いが美しく描かれた絵本
yukiwatari『雪渡り』は、こちら・bk1へ。
   
 「雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり、空も冷たい滑らかな青い石の板で出来ているらしいのです。」という一文に始まる宮澤賢治の『雪渡り』、絵本を開くと一面の雪の原がうっすらと青く、そして、七色の虹のような光を帯びて輝いています。 

 たかしたかこさんの描く雪の清らかなまぶしさが、四郎とかん子と小狐紺三郎が出会う世界へと導いてくれます。狐と出会った四郎はかん子をかばって「狐こんこん白狐、お嫁ほしけりゃ、とってやろよ。」と叫びます。「四郎はしんこ、かん子はかんこ、おらはお嫁はいらないよ。」と応じる小狐の紺三郎…宮澤賢治の語りがリズミカルに進みます。

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2005/02/22

(宮澤賢治・文/たかしたかこ・絵)『おきなぐさ・いちょうの実』(偕成社)

たかしたかこさんのやさしい色彩の絵の中で、美しく昇華された賢治の死生観や宇宙観を感じてみませんか。
okinagusaichonomi『おきなぐさ・いちょうの実』は、こちら・bk1へ。

 「うずのしゅげを知っていますか。」という語りで始まる宮澤賢治の『おきなぐさ』の物語です。「おきなぐさ」と呼ばれる「うずのしゅげ」を見たことのない私は、この絵本を開いて、その花の美しさにすっかり見入ってしまいました。
 「ごらんなさい。この花は黒繻子ででもこしらえた変わり型のコップのように見えますが、その黒いのは、たとえば葡萄酒が黒く見えるのと同じです。」という賢治の語りに、私の想像力が及ばなかった微妙な色合いや蟻と語り合う花びらの動きが繊細に描かれています。

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2005/02/16

(宮澤賢治・文/小林敏也・絵)『黄いろのトマト』(パロル舎)

『黄いろのトマト』の中で、あなたも賢治の心に触れてみませんか。ー小林敏也さんの抽象的で、メルヘンチックな絵の中に賢治の涙がにじんでいるようです。
kiironotomato『黄色のトマト』(パロル舎)は、こちら・bk1へ。

 町の博物館の大きなガラスの戸棚に四匹の雀蜂の剥製がいました。
 「私」は、その剥製の中でも、一番上の枝にとまって、羽を両方広げかけ、真っ青な空に今にも飛び立ちそうな雀蜂の剥製が好きでした。目が赤くてつるつるした緑青いろの胸を持ち、りんと張った胸には波形の美しい紋がありました。

 ある朝、その蜂雀が「私」に言ひました。「ペムペルといふ子はほんたうにいゝ子だったのにかあいさうなことをした。」雀蜂の声は、銀の針のような細いきれいな声でした。
 「私」は、話を聞くために、雀蜂の言うとおり鞄を床におろして、その上に座りました。
 「妹のネリといふ子もほんとうにかあいらしいい、子だったのにかあいさうだなあ。」と雀蜂は、仲の良いペムペルとネリのきょうだいの悲しい物語を続けます。
 途中、賢治の原稿が一枚抜けているため、ペムペルとネリが兄妹であるのか兄弟であるのか不確かですが、雀蜂は、二人が子どもだけでキャベツや麦を植えながら、暮らしていることを語ります。
 突然、途中で話を止めてしまった雀蜂…「私」は、両手をガラスにかけて雀蜂に続きのお話を頼みましたが、雀蜂は硬く死んだようになってしまいました。「私」は、涙を流しました。

 
 

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(宮澤賢治・たかしたかこ・絵)『鹿踊りのはじまり』(偕成社)

『鹿踊りのはじまり』(宮澤賢治・たかしたかこ・絵)(偕成社)
賢治の語りとたかしたかこさんのやさしい絵が見事に調和した絵本の中で、「鹿踊りの精神」を感じてみませんか。
shishiodorinohajimari

 「そのとき西のぎらぎらのちぢれた雲のあいだから、夕陽は赤くななめに苔の野原に注ぎ、すすきはみんな白い火のようにゆれて光りました。」という賢治の語りに始まり、「それから、そうそう、苔の野原の夕陽の中で、わたくしはこのはなしをすきとおった秋の風から聞いたのです。」という語りに終わる『鹿踊りのはじまり』ー「鹿踊り」は岩手県の花巻地方に伝わる伝統芸能のひとつです。
 
 白い火のようにゆれるススキの穂、そして、雲の間から射す赤い夕陽、すきとおった秋の風…全てが美しく感じられます。ススキの穂と秋の風から、賢治は「鹿踊りの精神」を感じ取っています。賢治は、森羅万象から言葉を聞く能力を持った不思議な人だったのでしょう。

 

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2005/02/15

(宮澤賢治画本・小林敏也・絵)『雨ニモマケズ』(パロル舎)

賢治の世界を余す所なく体現した画本―宮澤賢治の作品が好き、だけど、どうしても理解がとどかない…それでも賢治の作品が好きというあなたにお勧めの一冊です。
amenimomakezu『雨ニモマケズ』は、こちら・bk1へ。

  宮澤賢治の作品は児童文学に分類されることが多いようですが、理解するのは容易ではありません。理解が届かない部分が多い作品、謎が多い作品に満ちています。
 その理解が届かない部分、謎が多い部分が賢治の作品の魅力であるという矛盾の中で、戸惑っている賢治ファンの方も少なくないのではないでしょうか。私もその一人です。
 賢治の作品は、一人の人間のイマジネーションだけでは、味わい尽くすことが出来ない世界です。

 小林敏也さんの画本『雨ニモマケズ』に出会って、目からうろこが落ちるような思いを味わっています。なぜ、もっと早くに出会わなかったのだろうかと…。
 賢治の世界を小林敏也さんの版画が余すなく所なく体現しています。
 雨ニモマケズの詩の一行一行に、小林さんの版画が添えられ、その一行の意図する世界を存分に示しているように感じます。
 それは、言葉で伝えることのできない世界です。

 宮澤賢治の作品が好き、だけど、どうしても理解がとどかない…それでも賢治の作品が好きというあなたにお勧めの画本です。

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『猫の事務所』(宮沢賢治・文/小林敏也・絵)-宮澤賢治は本当に猫が嫌いだったのでしょうか?

(宮澤賢治・文/小林敏也・絵)『猫の事務所』(パロル舎)
nekonojimusho『猫の事務所』は、こちら・bk1へ。

  宮澤賢治は、本当に猫が嫌いだったのでしょうか。この絵本の最初に(私は猫は大嫌いです。猫のからだの中を考えると吐き出しそうになります。)という賢治の言葉を含む「猫」が引用されていますが、読者である私には、どうしても賢治が猫が嫌いだったとは思えないのです。

 『猫の事務所』という・・・ある小さな官衙に関する幻想・・・を読んで、その思いを強くしました。軽便鉄道の停車場の近くにある猫の第六事務所、そこでは猫の歴史と地理を調べる業務がなされています。小林敏也さんの描く事務所の入り口は、とても立派です。

 

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